炎上気味の案件を任され、「自分がなんとかしなければ」と重要な判断をすべて自分に集めた。責任感の表れのつもりだった——のに、気づけばメンバーは指示待ちになり、判断は私の返事待ちの行列に。この記事では、この悪循環をどう断ち切ったかから始めて、PMBOK第7版の原則⑥「リーダーシップ」が言う「役職ではない」の意味をたどります。
この記事でわかること
- 抱え込みがチームの当事者意識を下げてしまう仕組み
- リーダーシップの原則が言う「役職ではない」の意味
- 意思決定を委ねることで、立て直しが早まった話
SIerでPMをしながらPMPを学び直している筆者が、「リーダーシップ=役職の話」だと思っていた頃の自分に向けて書いた記事です。
リーダーシップの原則が言うのは、リーダーシップは役職の有無ではなく、状況に応じてチーム全体が発揮する行動だということです。方向性を示す、人を動機づける、意思決定を後押しする——こうした行動はPMの専売特許ではなく、チームのあちこちから立ち上がる状態こそが理想、というのがこの原則の見方です。
すべてを抱え込んで、チームを受け身にしてしまった
リーダーとして初めて炎上気味の案件を任されたとき、私は「自分がなんとかしなければ」と気負っていました。重要な判断はすべて自分に集める。メンバーからの相談には全部答える。責任感の表れのつもりでした。
ところが、しばらくして妙なことに気づきます。メンバーがどんどん受け身になっていくのです。「これはPMに聞いてから」「指示を待ちます」——自分で判断しようとしなくなり、私の返事待ちの行列ができていました。よかれと思った抱え込みが、チームの当事者意識を静かに奪っていたのです。炎上しているのに判断が私一人を経由するので、かえって遅い。悪循環でした。
思い切って、工程ごとのサブリーダーに意思決定権限の一部を委ねることにしました。「この範囲は、あなたの判断で進めていい」と明確に渡したのです。最初は不安もありましたが、現場での判断スピードが上がり、メンバーの目に少しずつ主体性が戻ってきました。結果として、プロジェクト全体の立て直しは、私が抱え込んでいた頃よりずっと早く進みました。手放すことが、前に進める力になったのです。
管理を「指示を増やすこと」だと思っていた
「リーダーシップとは、PMが先頭で強く引っ張ること」私は長くそう思っていました。でも、引っ張りすぎるリーダーは、しばしばチームの自律性を奪います。
強いリーダーシップが必要な局面は確かにあります。けれど、それを「常に一人で」背負うのは別の話。本当に強いチームは、リーダーが適切に手放し、メンバーが自分の持ち場でリーダーシップを発揮しています。「引っ張る」だけでなく「引き出す」も、リーダーシップのうち。この両面を持てるかどうかが分かれ目でした。
なぜ「分散」できるチームが強いのか
プロジェクトの状況は刻々と変わります。平常時と炎上時では、必要な振る舞いも違う。すべての判断をPM一人に集めていると、その人がボトルネックになり、判断が遅れます。リーダーシップを「分散」できるチームは、変化に強い。だからこの原則は、チームの原則とも深くつながっています。
これだけは外さないようにしていること
- 自分が抱えている判断のうち、「これは誰かに委ねられる」ものがないか棚卸しする
- サブリーダーやメンバーが判断を下せる「範囲」を、あいまいにせず明確に渡す
- 平常時と炎上時で、求められるリーダーシップの形が違うことを意識する
現場でよく聞かれること
Q. 権限を委譲したら、PMの責任はどうなる?
判断を委ねても、最終的な責任はPMにあります。だからこそ「どこまで任せるか」の範囲を明確にし、要所は握っておくことが大切です。丸投げとは違います。
Q. リーダーシップとスチュワードシップの違いは?
リーダーシップは「人や状況をどう動かすか(行動)」、スチュワードシップは「責任ある管理者としてどうあるか(姿勢)」です。近い場所にありますが、軸が違います。
まとめ
リーダーシップの原則とは、役職ではなく、状況に応じてチーム全体で発揮する行動でした。そして時に、手放すことが前進を生みます。あなたが今抱え込んでいる判断の中に、誰かに委ねられるものはありませんか? 一つ手放すことから、チームは変わり始めるかもしれません。
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