本番障害でチームが沈んだとき、最初にやめたのは犯人探しだった ― 「適応力と回復力」の原則

基幹システムの本番リリース直後、想定外の障害。対応は深夜に及び、「あれだけ準備したのに」という落胆と「誰のミスだ」という空気がじわりと広がっていく——リーダーを任されて間もない頃、私はこの場面でチームの立て直しを迫られました。この記事では、そのとき何をして空気が変わったのかから始めて、PMBOK第7版の原則⑪「適応力と回復力」を、この経験に沿って書きます。

この記事でわかること

  • 障害のあと、チームを前向きに立て直した振り返りの作り方
  • 適応力と回復力、それぞれが指すもの
  • 計画変更を「失敗」と決めつけると失うもの

筆者はSIerのPMです。本番障害も計画変更もひと通りくぐってきた実感と、PMPの学び直しで得た言葉をすり合わせて書いています。

言葉の整理を先に。この原則が求めるのは、変化に応じて計画やアプローチを柔軟に調整する「適応力」と、困難や失敗から立ち直る「回復力」の両方を、チームに組み込むことです。適応は「変化への対応」、回復は「ダメージからの復元」。どちらも、計画どおりにいかないのが当たり前のプロジェクトでは欠かせない力です。

本番障害で沈んだチームを、どう立て直したか

リーダーを任されて間もない頃、基幹システムの本番リリース直後に、想定外の障害が発生しました。原因の切り分けに追われ、対応は深夜に及び、チームの空気は一気に重くなりました。「あれだけ準備したのに」という落胆と、「誰のミスだ」という空気が、じわりと広がっていくのが分かりました。士気は目に見えて落ちていました。

ここで私が最初にしたのは、原因究明を急かすことではありませんでした。もちろん復旧は最優先で進めます。でも、落ち込んだチームに詰め寄っても、萎縮するだけで良い知恵は出ません。だから障害が落ち着いたあと、あえて「今回の障害から、私たちは何を学べるか」に焦点を当てた振り返りの場を設けたのです。犯人探しではなく、学びの棚卸し。

すると、空気が変わりました。「あの兆候に気づけたはず」「次はこの確認を挟もう」と、メンバーが自分から前向きな改善を語り始めたのです。失敗を「個人の罪」ではなく「チームの学び」として扱ったことで、回復力が働いた。チームは次のフェーズに向けて立ち直り、むしろ以前より結束していました。立て直しの分かれ目は、技術ではなく、失敗の「扱い方」にありました。

計画変更を「失敗」だと感じていた

かつての私は、「計画どおりに進めること」こそが良いPMの証だと思っていました。だから計画変更が生じると、それを失敗のように感じ、どこか後ろめたく報告していたのです。

でも、計画変更を失敗と決めつける文化は、チームから適応力と回復力を奪います。変化に応じて計画を変えるのは、むしろ健全な適応です。それを咎めると、メンバーは変化を隠すようになり、立ち直る力も育たない。「計画を守れたか」だけでなく「変化にうまく適応できたか」「失敗から学べたか」も評価する——その視点が、強いチームを作るのだと気づきました。

なぜ「変化ゼロ」を目指さないのか

どれだけ緻密に計画を立てても、プロジェクトは計画どおりには進みません。予期せぬ変化や失敗は、起きるかどうかではなく「いつ起きるか」の問題です。だとすれば、変化ゼロを目指すより、変化が起きたときに素早く適応し、失敗しても立ち直れるチームを作るほうが現実的で、強い。この原則はその割り切りを求めています。

今、意識していること

  • 計画変更を「失敗」ではなく「適応」として受け止める空気を作る
  • 障害や失敗のあとに、犯人探しではなく学びの振り返りの場を必ず設ける
  • チームが困難から学び、立ち直る機会を、意図的に用意する

よくある質問(FAQ)

Q. 適応力と回復力は、どう違うの?
適応力は「変化に合わせてやり方を変える力」、回復力は「ダメージを受けても立ち直る力」です。変化への対応と、失敗からの復元。両輪で捉えると分かりやすいです。

Q. 振り返りが「反省会」になって重くなりがちです。
「誰が悪かったか」ではなく「次にどう活かすか」に問いを固定すると変わります。過去を裁く場ではなく、未来を作る場だと最初に宣言しておくのがコツです。

ここまでの整理

適応力と回復力の原則とは、変化ゼロを目指すことではなく、変化に適応し、失敗から立ち直れるチームを育てることでした。あなたのチームでは、計画変更や失敗は、責められるものになっていませんか? 失敗の「扱い方」を変えるだけで、チームの粘り強さは変わってきます。

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